ぎんせいうりがたごうす・にしきうちばりくろうるしこばこいり

銀製瓜型合子・錦布内貼り黒漆古箱入り

-希望販売価格-

金35万円

応相談

※販売価格は基本・内税

販売中

【商品番号】:C-205

【時代推定】:唐末~晩唐

    9世紀半ば - 10世紀初頭

[古箱あり](黒漆塗り・錦布内貼り)

寸法

全高:5.7cm

長径:7.4cm

短径:5.7cm

蓋高:3.0cm

身高:3.2cm


 黒漆塗りで錦布が内張りされた古箱に納まる、小振りながらしっかりとした存在感ある銀製合子です。

 本器の全面には黒く酸化した形跡が見られるものの、、凸部は撫で磨かれたような様相で古代銀独特の〔しろがね〕の発色が現れ、磨き残った酸化銀の黒色が凹部や刻線をくっきりとみせています。
 造形や材質の様子から、本器は唐末・晩唐(9世紀半ば - 10世紀初頭)頃に作られたものと推測・推察されます。

 本器が日本に渡ってきた時期や経緯は定かではありませんが、本器を納めている漆塗りの古箱は日本で本器に合わせて作られたもので、内側に錦布で布張りされ、厚くしっかりと塗られた黒漆が飴色に透けはじめるほど時代を経た、大変良い状態です。
 黒漆が透けてくるには100年ほどかかると云われており、箱が作られた時期は遅くとも戦前は下らないものと推察されます。
 特別な品物・宝物を収めるにふさわしい精緻で丁寧なつくりであることから、日本においても非常に大切に扱われてきたことが窺われます。

 本器は一見すると精緻で愛らしい銀合子ですが、いろいろと調べてみると、本器の形や意匠および材質には様々な吉祥や願いが盛り込まれていることが見えてきます。

 本器は、所謂「瓜型」と称される器形の合子です。

 本器の実の部分は薄い銀板の打ち出しによって造形されており、しっかりと膨らんだ凸部とくっきりとした凹部によって、小振りながらもふくよかに膨らんだ実の量感が表現され、やや扁平な形にすることで、掌に収まる程好い大きさと据わりの良さが生み出されています。
 また、器表全体に青海波の様な鱗状の文様を刻み込むことで表皮の質感が表現されています。

 しかし、瓜をモチーフにしているものの、不可思議なことに、本器の造形には、実在の瓜類の蔕(ヘタ)部分には存在しない萼(ガク)のようなものが据え付けられています。
 この萼らしき部分は瓜以外の植物の果実や果菜の萼だとも考えられますが、このように三重に重なった萼を有する果実や果菜は実在しません。
 萼ではなく、葉を模式化したものとも考えられますが、ウリ科の葉とは様相が少々異なっています。
 よって、この部分は特定の植物を模したというよりは装飾的な意味合いが強いと思われます。

 このように、本器の形状は実際のウリ科の果菜とは相違点も見られますが、本器のように身に凹凸のある果実型の容器は、陶磁器類等の類型に倣い、慣例的に「瓜型」と呼ばれています。

 瓜類は、古くから保存性が高い果菜とされています。
 様々な瓜の中でも、特に冬瓜や南瓜は保存性が高いとされ、冬瓜は完熟後皮が硬くなり冷暗所保管で冬まで約半年品質を保つといい、南瓜は保存方法の少なかった時代から長期保存ができ栄養をしっかりと保持できる貴重な作物でした。

 瓜は吉祥の一つでもあり、中国の伝統的な吉祥紋に【瓜瓞緜緜】(かてつめんめん)があります。
 これは、『詩経』の「大雅・緜」に「緜緜瓜瓞(緜緜たる瓜瓞)」(「瓞」とは小さな瓜のこと)(「瓜瓞」とはそうか、つるで増える瓜)と記された、絡み合い長く伸びた蔓に、大小さまざまな瓜がなっている図案で、図中に蝶が配されているのは、「蝶」に「瓞」の音をかけているためだそうです。
 「瓜瓞緜緜」はもともと、瓜が次々と増えるように事業が発展していくことを形容したもので、後に、子孫繁栄を願う言葉として使われるようになり、また、豊作への祈りを表わすのにも使われています。

 萼らしき部分の各弁の内側には薄い金属の帯を巻きあげた文様が形成されており、その様子は渦文や渦雷文を彷彿とさせます。
 古来から雷は、天の意志を表す魔除けのおまじないとして使用されてきました。
 雷は植物の生長を促し、雷が多い年は農作物が豊作になる、と昔から言われています。
そのように考えると、三重の萼は雷を宿し恵みの雨を降らせて実りをもたらす雲塊や、尊くめでたいしるしとされる霊雲のようにも思え、萼部分の中心から伸びる蔕の蔓は雲を抜けて天空と繋がり、天からの恵みを実の中へと蓄えているようにも思えてきます。

 本器の素材である銀にも神聖な・神秘的な意味が込められているようです。

 銀は紀元前3000年ごろには、人間の生活舞台に登場しています。
 延性および展性が金に次ぎ高いため加工性に優れ、光の反射率が金属中で最大で可視領域にわたって98%程度と高いことから美しい金属光沢を有し、その白い輝きから宝飾品としても広く利用されてきました。
 古代において銀が利用され始めたころは、金が自然金としてそのまま産出することが多いのに対し、銀が自然銀として見つかることは非常にまれであったため、銀の価値は金よりも高いことが多かったといわれます。
 太陽を連想させる黄金色の金と対照的に美しい白い光沢を放つ銀は、広く世界的に月と関連づけられてきました。
 銀は月の光で魂を浄化する神聖な金属で強い反射で邪悪な物を跳ね返すとされ、銀のお守りは悪霊や魔術を防ぐ魔除けのアイテムとして古来から使われてきました。

 また、銀には強い抗菌作用があり、銀は古くから水の腐敗防止に利用されていました。
 今日では銀イオンが高い殺菌力を有することが知られていますが、銀を神聖視してきたのは、その輝きの美しさだけでなく、銀イオンの殺菌・防腐能力を経験則として感じ取っていたことの顕れではないかと考えられています。

 本器の造形と、素材である銀の性質を鑑みると、本器には保存性の高い「瓜」の外皮(=銀合子)の内側に納めた実肉と種(=富・子孫)を末永く護りたいという願いが込められているのではないかと思われます。
 本器がどのような物を納めていたかはわかりませんが、「子孫繁栄」と「豊かな暮らし」が子々孫々まで永々と続くよう込められた願いを半永久的に形となしたもの、といえるのではないでしょうか。

 細やかで愛らしい造形に、自然への畏敬や人の普遍な祈りと願いが込められた、観る人の心を引き付ける魅力を秘めた逸品といえるでしょう。


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