佐波理王子形水瓶
-希望販売価格-
金120万円
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※販売価格は基本・内税
御予約済
【時代推定】:~奈良時代・~8世紀
鋳造
寸法
高:21.5cm
胴径: 9.4cm
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《王子形水瓶》或いは《王子瓶》などと呼び習わされている『佐波理』の水瓶です。
《王子形》の名の由来には、「聖徳太子(574~622)の王子たちが好んで用いていた」という伝承に則したとするもの、あるいは、玉子形の玉の点がなくなったとするもの、など諸説あります。
この水瓶の形は中国・隋時代(581~618)頃からはじまって唐代に受け継がれ、日本には、飛鳥・奈良時代(592~794)に遣隋使・遣唐使を通して仏教とともに伝えられました。
日本では往時からこの種の水瓶を特に珍重し、殊に奈良の大寺などでは仏前に聖水を供養する《瓶・華瓶》として盛んに用いていたようですが、平安時代以後には姿を消したと云われています。
『佐波理』は、古くから皿形や鉢形の様々な古銅器の製造に用いられている合金です。
『青銅(ブロンズ)』と同様に、銅に錫を混ぜた硬い銅合金の一種で、錫を二割前後含む「高錫銅合金」の地金が『佐波理』と呼ばれています。
「高錫銅合金」であるため、通常の『青銅(ブロンズ)』に比べ鋳造が非常に難しい合金で、金属鋳物の中でも最も高度な技術が必要とされています。
硬い反面、強い衝撃に弱いという性質上、落下させると割れるおそれがあり、取扱いには注意が必要となります。
この合金には、時代や用途等によって『佐波理』『砂張』『沙張』等、他にも様々な字が当てられています。
『砂張』の文字は室町時代以後に茶人が使うようになったと云われ、それ以前は『佐波理』と表記されています。
『砂張』は、一般に響銅製の古渡りの花瓶や建水などの茶道具を指し、『沙張』は、「おりん」等の種々の仏具を指す場合に用いられることが多いようです。
軽く触れるだけで心地よいすずやかな音色を響かせるところから、『響銅』『鳴金』とも呼ばれています。
『佐波理』の起源は古く、奈良時代には既に日本の文献にもその存在が記載されています。
古代に鋳造された『佐波理』は、主原料である銅・錫の他に、混ぜることで合金の切削性を高め融点を下げる鉛・蒼鉛(ビスマス)などを微量ながら含む場合があり、中には金や銀を少なからず含む『金佐波理』『銀佐波理』があると云われています。
金属の精錬・鋳造加工などの技術はアラビア半島(メソポタミア)が発祥といわれ、インドを経て、中国で『佐波理』『青銅器』などの鋳物の技術が発展したとされています。
蜜蝋で器物の原型を作り、その周囲を砂などの耐火物で固め、これを加熱して原型の蝋を溶かし出してできた空洞に溶融した金属を流し込むという、精密な鋳造を可能にする蜜蝋鋳造の技術は、紀元前に古代エジプトで開発されたと云われています。
これらの技術は、奈良時代には大陸より仏教とともに日本にも渡来し、国内でも諸々の器物が、『佐波理』『金銅』『白銅』等の合金で鋳造されるようになりました。
この《王子形水瓶》の表面は、丁寧な仕上げの技術によって非常に滑らかな状態を表していますが、気付かなければそれと分からないほどの型持たせの痕が随所に見られる事から、挽き物仕上げではなく、蜜蝋鋳造であることが分かります。
胴から高台への滑らかな仕上がりは、瓶全体が分割されることなく、一鋳による一体成型によって鋳出された証であり、当時の鋳造技術の高さを物語っています。
頸の付け根を廻っている輪環状の装飾の内外に見られる艶を失った部分は、往時から拭いきれなかった埃や汚れが長年こびり付いたまま固着したもので、千年以上経過した『時代錆』の様相を呈しています。
『時代錆』のような表面の変化によって薄っすらと雲がかかったように白濁した様子は、水瓶の随所に窺えます。
頸部の斑状の部分と胴部の刷毛目状の部分を詳しく観察したところ、器の外面にごく薄く『透き漆』が塗布されていることが判りました。
頸の中ほどの幅広く色艶の変化し斑になった部分は指先で摘み持たれたことによる手擦れ、胴部の刷毛目状に色艶が変化している部分は『透き漆』を塗布した際の刷毛目の痕跡と考えられます。
器の表面の曇りのない部分は、『透き漆』の皮膜によって、金属の地肌とは異なるつややかで柔らかく滑らかな独特の艶やかさと照りを見せています。
薄っすらと白濁しているのは透き漆の表面だけで、水瓶の外面には錆のような状態変化が見られないことから、透き漆が水瓶の金属表面を完璧に保護していることがわかります。
口部内側や高台内器壁部分には、やや青緑がかった白い発色が見られます。
これらは、恐らく『佐波理』に含まれてる銅のイオンの発色で、伝世『佐波理』にまま見られる現象です。
小気味よくさっと朝顔形に開いた口、上端が細くきゅっと引き締まり付け根が太く逞しいすらりと力強く伸びた長い頸、肩から腰にかけてなだらかにゆったりと膨らみ広がる柔らかな曲線に包まれた量感のある胴、それを支えて踏ん張りを利かせる力強く引き締まった高台など、各部位の釣り合いと曲線の対比は実に見事で、すっきりと立つ瓶の姿には、柔らかさの中にも張りのある緊張感が溢れています。
日本国内で鋳造されたとする証はありませんが、隋や唐・新羅などのものとは趣を異にする、日本の風土に根ざした美意識が感じられ、時代を経て落ち着いた柔和な姿の中に、秘めたる生命力と、襟を正したくなる気品とが満ち溢れているように感じられます。
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