かんりょくゆうぎんかつぼ

漢緑釉銀化壺

-希望販売価格-

金150万円

応相談

※販売価格は基本・内税

販売中

【商品番号】:C-260
【時代推定】:後漢(A.D.25年-A.D.220年)
[桐箱あり]

寸法

 高:26.6cm

胴径:30.3cm


 悠久の時という魔法が生み出した白銀色の薄衣を纏う漢緑釉の壺です。
 歳月と自然の力のみが成し得る美しい銀化の薄衣が千変万化の表情を見せており、シンプルな造形ゆえに銀化による輝きとどっしりとした器の存在感がより引き立っています。

 古陶磁では、「漢」といえば「緑釉」というほど漢緑釉陶は漢時代を代表する陶磁器で、「漢緑釉」といえば「銀化」がつきものです。
 銀化とは、透明釉の風化によって生じた薄膜の多層構造内で光が干渉しあって発生する構造色により金属的な発色を生じる現象で、銀白色や銀虹色、時には金虹色が現われることもあります。

 一般に、自然銀化には数百年以上を要するといわれています。
 薬品を用いて人為的に発生させることも出来ますが、その場合は薬剤による腐食加工であるため不自然さが拭えないものとなります。
 銀化の状態は風化の程度により異なり、うっすらと虹色がかって見えるものから、ほとんど色彩を失い粉を吹いたように灰白化したものまでと様々で、白化した緑釉陶の中には出土品の玉器に似た風合いに見えるものもあります。
 土中による自然銀化は漢緑釉陶に顕著で、他の陶磁器ではあまり見られません。

 漢緑釉陶は鉛釉陶の一種で、鉛釉陶は中国陶磁の生産技術にある種の革新をもたらし、漢時代に膨大な数量が焼成されました。
 世界の陶磁史のなかで、外国からの技術導入ではなく、自発的に施釉陶を開発したのは西アジア・エジプト地域と中国でした。
 漢時代には、灰陶、加彩灰陶(彩陶)、黒陶、灰釉陶、鉛釉陶、原始青磁などが登場しました。
 なかでも、灰釉と鉛釉は、中国陶磁の重要な基礎釉です。
 灰釉は植物灰を原料とする自然釉の延長線上にある釉薬で、木灰や土灰が溶媒となり約1200℃以上で焼成することで、釉薬をガラス化する高火度釉です。
 一方、鉛釉は人工釉で、釉の組成がクリスタルガラスと同等の透明釉であり、鉛釉薬の融点を低くする作用のある鉛の酸化物を溶媒とすることで800℃前後での焼成が可能になった低火度釉です。

 中国で初めて鉛釉陶が焼成されたのは戦国時代とされ、戦国時代にも鉛釉陶の遺品がありますが、出土例は少ないようです。
 鉛釉陶器が本格的に製作されるようになるのは漢時代からです。

 漢時代の鉛釉陶は、前漢時代の褐釉陶と後漢時代の緑釉陶とに大別され、褐釉は鉄を、緑釉は銅を、それぞれ呈色材に用いています。

 漢時代の褐釉陶や緑釉陶は日用器ではなく墳墓に副葬する為に造られた明器として知られています。
 漢時代は厚葬の風習がありました。
 当時、伝統的な祭器を明器として副葬品に用いるのは、厚葬であることを示すのに相応しいことであった、と考えられます。
 殷・周時代の青銅器を模した壺・鼎・酒尊などの祭器の器形が多いとされていますが、単に青銅器を模していただけではなく、その他にも人物像や動物・建物等、漢代の人々の生活が窺われる生活に密着した様々な造形の作品が発見されています。

 青銅器は祭器として作られたものが多く、中には古玉の祭器を模したものも見受けられます。
 玉器の中には青銅器よりも古い時代に作られたものが多数あることから、中国祭器の祖形は玉器にあると考えられます。
 また、中国陶磁では、青磁は青玉の再現・白磁は白玉の再現、と云われているように、古来から陶磁器による玉石の再現を試みていた節があります。
 漢緑釉は当時の陶磁器としてはより艶やかで鮮やかな人工色で、灰陶・黒陶・加彩灰陶(彩陶)のみならず、施釉陶である灰釉陶に比べても艶やかな仕上がりでした。
 漢緑釉陶は古代青銅器を模していたとされていますが、緑釉の艶やかな仕上がりや釉質がガラス質で色褪せや変色をしない点に着目すると、青銅器の緑青錆の色というよりは、玉器として磨き上げられた緑碧玉の質感に近いように思われます。

 漢緑釉陶は、素焼きした素地の外表面に低火度釉である鉛釉を掛け、窯内に幾段にも積み重ねて本焼きを行っています。
 この本焼きは、胎を焼き締めるためではなく、胎表面に鉛釉を焼き付ける意味合いが強いと考えられます。
 釉薬は厚くたっぷりと掛けられていますが、壺瓶類の内側にまでは掛けられていません。
 内側に釉薬が掛かっていないと水分が滲み出てしまうため実用品では欠点となりますが、明器であれば外側の目に付く部分だけに掛かっていれば問題にはなりません。

 漢鉛釉陶の胎土は鉄分を多く含むため煉瓦のような色味をもった細密な陶質で、新石器時代から殷・周代を中心に漢・唐の頃まで日常の容器として広く用いられた無釉陶の陶質土器とほぼ同質との研究報告が出ています。
 陶質土器は長石の溶融温度以下の1100℃前後で焼成しているとされ、無釉陶の陶質土器とほぼ同質の漢鉛釉陶の素地焼成温度も同程度であると思われます。
 灰釉陶の焼成温度で重ね焼きを行うと器胎が焼き歪みを起こすなどして焼成中に崩れてしまう恐れがありますが、鉛釉は器胎素地の焼成温度よりも低い800℃前後での低火度で溶融するため焼き崩れる恐れが少なく、〔口合せ〕と呼ばれる重ね焼きによる大量生産に適していたと考えられます。
 漢の墳墓は埋蔵品が桁違いに多いらしく、一箇所の古墳から膨大な量の緑釉や褐釉の陶磁器が出てくるということも鉛釉陶の大量生産の規模と効率を物語っています。
 ただし、焼き割れや焼き歪みのリスクが抑えられたとはいえ、大型の器物焼成は困難であったのか、遺例は多くはないようです。

 古代祭器の質感を模した漢緑釉陶は副葬品に用いるに相応しく、要望に応じ自由に様々な器形を生み出すことが出来、また、大量生産が出来ることで多くの需要に応えることも出来たため、当時の副葬品に用いるに好適な『やきもの』であったと考えられます。

 本器は漢緑釉陶としては比較的大きめの部類で、下部(腰部)は、紐状の陶土で底を丸く作り、その上に陶土の紐を積み重ねるようにして作っていること、同様に陶土の紐を積み重ねそれぞれ別個に作った口部・上部(肩部)・中央部(胴部)・下部(腰部)を積み上げ丁寧に繋ぎ合わせて(胴接ぎして)いること、が器内の様子からわかります。

 べた底の底部および器内は露胎で赤茶けた煉瓦のような色合いを呈しており、その様子から本器の胎は陶質であることがわかります。
 また、表面には、轆轤を用いて丁寧に削り仕上げをした様子が銀化による反射ではっきりと浮かび上がっています。

 口唇部上面に焼き支えの目痕が三箇所見られることや、底部に焼き支えの断片が残っていることから、器を積み上げる際に本器が上下を挟まれた状態で重ね焼き焼成されたことがわかります。
 また、器の上下を逆さまにして焼き上げる〈伏せ焼〉の状態で焼成されたことが、器壁表面の釉の流れ方が底部から口部へと向いていること、口唇部上面にごつごつした緑釉の釉溜りが瘤状の突起となって幾つも現れていること、中央に向かって窪んでいる底部には焼成中に上に重ねられた器から焼き支えを伝って垂れ落ち蓄積したと思しき緑釉が見られること、などからわかります。

 これらの特徴は、漢緑釉陶器に関する様々な研究報告で述べられている特徴と合致します。

 本器の器形は、多くの漢緑釉陶と同様に、古代の青銅器を模していると思われます。
 青銅は、銅を主成分とし錫を含む合金で、一般にいう青銅色は彩度の低い緑色ですが、本来の青銅は光沢ある金属で、その色は添加物の量によって様々です。
 添加する錫の量が少なければ日本の十円硬貨にみられるような純銅に近い赤銅色、多くなると次第に黄色味を増して黄金色となり、ある一定量以上の添加では白銀色となります。
 当時の人々が緑釉の銀化について知っていたかは定かではありませんが、銀化することによって期せずして古代中国で「吉金」「美金」と称してた青銅の製造直後の色彩に近づいたということが出来ます。

 本器表面のほぼ全面を覆う全くと言って良いほどくすみなくはっきりとした〈銀化の白銀色〉と、その隙間の所々から窺える〈深みのある緑〉の色合いとが綾なす玄妙な風合いは、素朴ながらも堂々とした体躯の表情に物静かな風韻を醸し出しています。
 漢緑釉陶は中国大陸で大量に出土し目にする機会が多くなったとはいえ、状態の良い美しい銀化が現れたものは希少であるといえるでしょう。

 本器は、人が土から生み出したものを自然の力と歳月が土の中で仕上げた、この世に一点だけの『古美術品』であり、『古美術』の醍醐味にあふれる逸品といっても過言ではないでしょう。


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