はくじりんかひらがたごうす

白磁輪花平型合子

-希望販売価格-

金15万円

応相談

※販売価格は基本・内税

販売中

【商品番号】:C-229

【時代推定】:晩唐

9世紀半ば~10世紀初頭

[桐箱あり]

寸法

高:3.1cm

径:6.9cm


 しっとりとした手触り感や蓋と身との合せ具合が心地よい、手のひらサイズながら存在感ある合子です。

 本器の器形は、蓋の甲を一段盛り上げた蓋とほぼ同形の身とを合わせた、上古の玉器に多く見られる典型的な器形に三弁の輪花型の小粋な意匠が施されており、実用性重視だけでない端正で優美な洗練されたデザインに仕上げられています。
 本器の〔胎土〕は灰味が強くて粒子が細かく、鉄分をかなり含んでいるため、焼成後の器の露胎部分の所々に鉄分が熔出し、釉中にも多数の黒斑点が現れています。
 この特徴は、灰味の強い胎に白釉を施したという唐代晩期の磁州窯系の作品の特徴を表しているように思われます。
 本器を覆う白磁釉は、釉表面の仕上がりの様子から、鞘に入れて還元焼成されたものと思われ、古来から中国人が好み憧れた〔羊脂白玉〕に通じる「白」を見事に具現化しており、晩唐において完成の域に達し北宋白磁へと繋がる白磁焼成技術の片鱗が垣間見えます。

 白磁は青磁の製造技術の完成と共に発展したとされ、白磁と青磁とは深い関連性があるとされています。

 青磁は、紀元前14世紀頃の中国[殷]の時代に遡る灰釉から発展したとされ、青磁と呼ぶことのできる釉が現れたのは後漢~西晋時代の江南地方で、越州窯(浙江省)の青磁が有名です。
 越州窯の〔青磁〕は以降の〔青磁〕系譜の原点とされており、それ以前の灰釉と青磁釉の中間的な釉をもつ陶磁器を〔原始青磁〕〔初期青磁〕と呼び、以降の〔青磁〕と区別する場合があります。
 青磁焼成の最盛期は北宋時代後半から南宋時代で、汝窯(河南省)、耀州窯(陝西省)、龍泉窯(浙江省)、南宋官窯(浙江省)などが名窯として知られています。

 白磁は、青磁器に用いる釉材から鉄分等の呈色材となる成分を除去してつくられたといわれていることから、白磁の母体は青磁であるとされています。
 白磁の起源は560~570年代の北斉に遡ると言われており、これを裏付ける白磁に関する〔やきもの〕の例として、562年に没した庫狄廻洛の墓(山西省寿陽県)から低火度の鉛釉(呈色剤を入れないと透明体である釉)を白素地に施した明器が、575年に没した范粋の墓(河南省安陽県)から高火度釉の白磁壺と白磁碗がそれぞれ出土していることが報告されています。
 白磁は、6世紀以前には高火度釉陶磁の伝統がまったくなかった華北の地で発展し、北斉に続く隋・唐・宋時代は華北が白磁の主産地となり、唐代の邢(ケイ)州窯、唐・宋時代の定窯などの名窯を輩出しました。

 中国陶磁器の釉色は、青磁・白磁をはじめ、辰砂・紅釉・黄釉といった中国陶磁器の釉色と、玉の様々な色味とには類似性が見られます。
 おそらく、初期青磁以前の自然釉や灰釉陶に生じた釉溜りの緑色に、青玉(翡翠)の色味を見出し、〔やきもの〕を青玉色の釉で覆うことを考えたのが青磁の始まりであろうと思われ、ここから、青磁は青玉を、白磁は白玉を人工的に再現することを目指したものであると推論されます。

 中国の玉文化は紅山文化(~紀元前4700~紀元前2900~)・良渚文化(~紀元前3500~紀元前2200~)・龍山文化(~紀元前3000~紀元前2000~)期に遡り、「玉」は新石器時代~青銅器時代において貴重品であったとされています。
 「玉」は中国では美しい石、宝石の総称で、「硬玉(ヒスイ輝石)」と「軟玉(ネフライト:透閃石-緑閃石系角閃石)」に分けられます。
 一般には硬玉の方が価値が高く、軟玉は中国以外では宝石とされず半貴石に分類されますが、中国人は古来軟玉を好み、祭玉・瑞玉・佩玉などの玉器に加工されたのは主として軟玉で、特に白色の軟玉は非常に好まれて数々の作品が残っています。
 硬玉のモース硬度は[6.5-7]、軟玉のモース硬度は[6-6.5]であり、玉は宝石の中では硬度が低い部類に入りますが、一方で、硬玉・軟玉とも、針状~繊維状の小さな結晶が内部で複雑に絡み合った構造の鉱物であり、衝撃に弱い方向というものが存在せず、すべての鉱物の中で最も割れにくい性質(靭性)を持っています。
 「独特の美しい質感」「硬度が低く加工が容易」「割れにくい」という特徴や、邪気を防ぐ効果があると信じられていたことも、玉が古くから実用品や装飾等の材料として用いられ珍重された理由であると考えられています。

 玉には、〈半透明〉〈白〉〈深緑〉〈青〉〈黒〉〈黄〉〈橙〉〈赤橙〉〈ピンク〉といった様々な発色のものがあり、その発色や模様の現われ方によって、〔白玉〕〔青玉〕〔黄玉〕〔紅玉〕〔青白玉〕〔碧玉〕〔墨玉〕等と分類されています。
 中でも白玉が最も高級とされ、あたかも脂身のような白~乳白色の〔玉〕は〔羊脂玉〕(マトン・ファット・ジェード、やんしーゆー)、その中でも白く透明感のある最上質のものは〔羊脂白玉〕(やんしーばいゆー)と呼ばれ、中国では硬玉よりも価値が高いとされています。

 本器の白濁釉の発色は均等ではないものの、薄っすらとした灰白の色合いを呈しており、その明るい灰白色は純白よりも量感があり、〔羊脂白玉〕に通じる、〈脂身〉あるいは〈ホイップクリーム〉や〈ヨーグルト〉を思わせるような、一種独特のねっとりした[柔らかさ]を表しています。

 合子の蓋と身の側面には、蓋と身が合致する位置を示す〔合印〕が施されていることが多く、本器の場合は意図的に施された側面にみられる目立つ釉垂れが〔合印〕の役割を担っています。
 この〔合印〕の側面の釉垂れは、合わせ目を跨いで上下で連続していることから、上下を重ね合せた状態で焼成していることを示しています。
 釉垂れが合わせ目を跨いで連続しているということから、焼成時には合わせ目の隙間に釉が流れ込むことが予想されます。
 合わせ目の隙間に釉が流れ込めば上下が接着された状態となるため分離が困難になることが予想されますが、欠け等の破損なく分離できていることや、本器の上下の合わせ目部分やその周辺に焼成後に削り整形している痕跡が見られることから、合わせ目に磁土・磁石の砂粒等を挟んでおくなど、焼成時に合わせ目に釉が流れ込んでも焼成後に剥離しやすい工夫がなされていたことが推察されます。

 本器は一見、典型的な白磁合子ですが、器内が施釉されていないという陶磁製合子としては特異な特徴があります。
 合子は、印池・香合・薬剤・嗜好品・化粧料・薬味入れ等に用いられることが多く、陶磁製合子の内側は、通常は収納物の乾燥防止や合子への水分・油分・色素等の浸み込み防止のために施釉されています。
 本器は、香合として乾燥したものを収める場合でも色移りや匂い移り等が生じる恐れがあり、日常において用いるには難があると思われます。

 本器の表面は滑らかですが、釉表面には裸眼では見えない程度の使い擦れらしき微細な傷がみられます。
 また、土臭は全く感じられないものの露胎部や釉表面の細かな気泡には土銹が浸み付いていることから、ある程度の長い期間、土砂・泥水に埋もれていたと考えられ、発掘品であることが窺われます。
 おそらく、後世に発掘され、付着していた土銹等を丁寧に洗い落し、柔らかい布や人の手肌で丁寧に時間をかけて拭い磨き上げたものと思われます。
 土中していたにも関わらず釉面の荒れもなく滑らかな表面を得ることが出来た理由としては、頑丈な地下室や地下蔵か石室等に納められていたことにより非常に良好な環境で保存されていたためと推測されます。

 包容力を感じる柔和な白い色合いや、親しみやすく大らかで器全体にふくよかさを漂わす造形から、[中華文明の華を開いた唐時代]の深遠さが感じられる一品であるといえるでしょう。


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